懐かしい町を歩く

機会があって、子どもの頃過ごした町を歩いて想い出の場所を辿った。

小学校までの通学路、の裏道。危ないから通ってはダメと言われていたけど、ここを通るとかなり時間が短縮できる。子どもの頃から朝に弱くてギリギリまで寝ていた私はこの道を毎日急いだ。この狭い道の両側の塀に反響するビィンビィンという自分の足音を良く覚えている。試してみたら今でもそんな音がした。

友だちとよく遊んだ聖カテドラル教会。両親が結婚式を挙げたところ。丹下健三のデザインだったなんて社会人になってから知ったこと。毎週日曜に鐘をならしてくれるところ。今は大改修工事を行っている。ここは大きくてかっこ良くて、なんだかとても好きだった。

ここは教会の敷地一番奥にあるフランスのルルドの洞窟を再現したもの。子どもの頃から、この一角はなにか空気が違うような気がして、落ち着く空間で好きだった。遊んでいる途中に、ここまで飛んで行ったボールをよく取りに行ったが、しばしマリア像を見上げてその不思議な空気を感じて気持ちが安らぐ心地よさを味わったことがたびたびあったように思う。ここだけがちょっと涼しくて程よく湿り気があって、静かでしっとりとしているのだ。今回も変わらない空気を感じてすごく落ち着いた。

昔流行ったにおい消しゴムなんかを買いあさりに行ったりして毎日通った文房具屋や、同級生の実家の銭湯や、よくお使いに行った生協などを回って歩いているうちに、夏休みのラジオ体操で通った公園にたどりついた。こ、こんなに狭かったっけか!?ここに何十人も集まって体操してたはずなのに…。

公園の片隅にさりげなくいたこの“リス”。見た途端、このリスにはよ〜く座ったものだ、というすっかり忘れていたはずの記憶が突然戻った。まだ頑張って働いてるんだね。偉いぞ〜リス。

昔住んでいた家の敷地にはもう違う家が建っている。でもかつての私の部屋の窓からの眺めは、裏の家の敷地前から今でも見ることができた。昔よりマンションが増えたんだなあ。でも近辺の空気感は驚く程全く変わっていなくてホッとした。

私という人間のルーツは一体なんだろうと考えてしまう。子ども時代に過ごしたこの土地は今の私を形作る上で、とても大事な欠かせなかった存在であり、それだけに私にとって思った以上に癒される場所なんだということがよくわかった。そう思えるだけ、この土地が良い意味で昔のままをほぼ維持していることにひたすら感謝、である。

アトリエ小びん

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