私のパワースポット。東京カテドラル聖マリア大聖堂

カテドラル教会といえば、丹下健三設計で、建築デザイン書などによく登場し、有名な大聖堂なのだが、私にとっては、生まれ育った町に建つ、毎日目にする極身近な教会であった。学校が終わると、教会の敷地で、友達と集合し、ゴムだんや、フルーツバスケットなどをしてよく遊んだものだ。また、ここは両親が式を挙げた教会でもある。今では、カテドラル教会で挙式、向かいの椿山荘で披露宴、という流れは定番だが、教会が建って間もなくその方式を取り入れたと言って、私の父は、自分たちが走りだったように自慢気に話している。

私は、キリスト教信者でもなんでもないが、時々この教会を訪れる。懐かしいだけでなく、ここの教会自体が好きなのである。

教会に入り、椅子に腰を下ろし、広い空間に漂うひんやりとして澄んだ空気、荘厳なデザイン、意匠に一通り見とれたあとは、ピエタ像を拝む。いつ見ても美しい。そうしていつまでもいたいのだが、そうも行かないので、あきらめて外へ出ると、次は、駐車場奥にある、ルルドの洞窟のレプリカを見る。しっとりと濡れた岩の上に立つマリア像を見ると、なぜか、子どもの頃からとても気持ちが安らぐのだ。そして最後に、モダンで美しくそびえ立つ外観を見上げる。しかし、視界に入り切らないので、向かいの椿山荘側へ渡って、もう一度眺める。そうして改めて惚れ惚れとして帰ってくる。

今回は初訪問の夫を案内した。夫もこの教会には驚き、感動した様子。

たまたま結婚式の最中だったのだが、端の席に座っての見学が許された。ここでの式を見るのは初めてだった。私の両親もこんな風だったんだろうか…。私の生まれる前の両親を想像しながら、色々なことを思い、しみじみと見ていると、最後に「アヴェ・マリア」を教会の2階から女性がアカペラで斉唱。高くそびえる教会中に澄んだ声が降り注ぐように響き、自然と涙がでるような感動を覚え、とても神聖な気持ちになった。

この教会は、私にとって、とても不思議で特別な空間である。

おそらく、教会自体の空間のすばらしさに加え、生まれ故郷であるがゆえの懐かしさ、子どもの頃の幸福感、両親のぬくもりなどが混ざって、特別な気持ちになるのだろう。ある意味、私にとってのパワースポットである。

今回、改めてそんな風に感じ、これからも自分の癒しと安らぎの場所として大切に思い、時々は訪れたいと思った。

アトリエ小びん

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