スーパー・エッシャー展

エッシャーを最初に知ったのは多分小学生の頃。「だまし絵を描く人」というイメージだった。でもどうやらそれだけではないらしい、という程度の漠然とした予備知識で行った。会場には初期から晩年の作品まで盛りだくさん。全てを見ると「だまし絵」にたどり着くまでのエッシャーの作品の変遷がよくわかる。そう「だまし絵」はそれまでの集大成だったのである。

絵画展というと、私の場合大体途中で集中力が切れるのだが、今回は一点一点をじっくり見たし、見れば見るほど興味がわいてくるという感じで、どんな細かいところも見逃したくなかった。ただし、途中時間切れで閉館のアナウンスが入ったので、後半残すところあと半分というところで、じっくり見ることを止めて、早足で見なければならなくなった。できればもう一度行って後半をじっくり見たいくらいである。

特に興味深かったのは、音階を線分で表現した作品、様々な線描のパターンで作成された木版、なかなか見られないラフなスケッチやメモ書き。それと、正則分割の表現がスペインのアルハンブラ宮殿のモザイク模様を見たことがきっかけというのだが、今年の春に私が見てきたばかりだったので、同じ場に立って同じものを見たのかと思うとリアルな感じがして、とても嬉しかった。

それと、今回初めて知った彼の描く小動物や架空の生き物のかわいらしいこと。とくに「でんぐりでんぐり」(上の写真)は何とも言えない。会場では、デジタルの技術によって、その生き物たちが彼の作品の中を歩き回る映像を流していたが、もしもエッシャーが生きていて、その映像をみたらなんと言っただろう? 感動するかな? ビックリするかな? 想像するとちょっと楽しい気分になる。それくらい、エッシャーの描く生き物は不思議な世界の中でイキイキとしている。だまし絵だけでなく、たくさんの彼の作品を知ることができて良かった。

アトリエ小びん

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