「まほろ駅」と「まちだ駅」
「まほろ駅前多田便利軒」を読んだ。便利屋を営む男のところに、曰く付きの旧友が転がり込んでから、変化していく便利屋男周辺の人間模様や心の変化を描いた痛快な物語。直木賞受賞した女性作家・三浦しをんの作品。
面白くてあっという間だった。話がおもしろいのもあるが、物語の舞台と知っている街をつなぎながら読むのが余計に面白かった。そう、これは町田駅前の話だ! 以前町田に住んでいたのですぐにわかった。町田の人にはすぐにわかるはず。「東京の南西部に、神奈川へ突き出すような形で存在する」し、「都内なのに市内を走るバスは横中…」は神奈中だし、「ハコキューデパート」は「小田急デパート」だし、「ハコキュー北口の時計広場」は小田急北口のカラクリ大時計があるカリヨン広場だし、市内一番の進学校「まほろ高校」は町田高校だし…地名もみんな一字違いの似た地名になってるし、挙げればきりがない。
「新宿鮫」や「カディスの赤い星」のように、実際の街をそのまま舞台にした小説はよくあって、現実味が増すので結構好きなんだけど、「まほろ駅前多田便利軒」は若干地名を変えてるのに具体的な地理を描いているだけに、「連想」がおもしろかった。そう言う意味では古い街と今の街をつなぎながら読む「鬼平犯科帳」なんかもおもしろいかな。
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