夕凪の街、桜の国

前半は原爆が落ちて10年程経った広島「夕凪の街」、後半は被爆者の孫世代の目線で語られる東京「桜の国」を舞台にしている。両時代の女性2人と、その2人の間に受け継がれる“髪留め”を通して、過去から今もなお続く被爆の悲しい影響が描かれている。

主に前半が良かった。泣けました。被爆に苦しむ人々の悲しみや、それでも前向きに生きようとする姿は健気ではかなくて見ていて辛い。どうして広島に、どうして私たちが…という台詞は見ている方に刺さってくる。夕凪の街の蒸し暑さと、被爆の苦しさも相まって、全体に息苦しく重い湿り気を感じる。

対照的に後半は、コミカルで平和な日常の食卓の風景から始まり、平和の象徴のような主人公、被爆者の孫である田中麗奈はサバサバッとあっけらかんとしている。それでも被爆者である家族と暮らした体験を通して、間接的に辛い事実を感じ、心の奥に微かに留めている彼女を見ると、戦争に対する自分自身の気分が共鳴したような気がした。そう思えるだけに、後半は、前半の話を見た誰かの感想を聞かされているような感じがある。それだけ見せ方がストレートなのか、演出や語りが過多だったのかな。

でも、とにかく風化されてはならない事実があるということ、平和のありがたさをまた再認識できる良い映画だったと思う。たくさんの子どもたちに見てもらいたいな。

アトリエ小びん

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