生き物ってスバラシイ!〜馬編〜

天気のいい昼下がり、田舎のある牧場に行きました。

馬が何頭か放牧されていました。

そこはとても静かなところで、ときおり聞こえるのは 馬の「ぶるるるるー」という身ぶるいだけでした。

わたしは金網にかじりついて、その馬たちを観察していました。

同じように金網にかじりついている人間が、 わたしの他に4人いました。

男女のカップルと、ふたり組の女。

馬たちは、えさを食べたり、ねむったり、 人間に興味を示したり、それぞれに好き勝手でした。 とてものどかな光景でした。

しばらくすると、静寂を破る「キャー」という人間の悲鳴。

見ると、ふたり組の女が金網から猛スピードで離れて行くところでした。

彼女たちのいた金網近くには1頭の馬がじっと立っています。

クサイ糞でもしたんだろうか?と見たけれど、 そんな汚物は見当たりません。

気になって、近くで見ますが、なんの不思議もないようです。

(何だったんだろう・・・)

するとそのとき、

「なにあの黒いの?!」

同じように興味を引かれて寄って来たカップルが言いました。

見ると、その馬を指差しています。

(なに?黒いの?)

その指の差す方を見ました。

(え?!)

一瞬うしろ足が3本あるのかと思いました。

でも、うしろ足の間から出ているものは

足とはまるで違う、意志を持ったように微妙に動く、

黒くてベロリンとしたモノスゴク長い物体。

それは、子孫繁栄願望を隠しきれなくなってしまった印でした。

(キミはなにを出しちゃってるんだっ!)

人間の女に、子孫を託したくなったのでしょうか。

それとも、人間の女に興奮するたちなのでしょうか。

とにかく、わたしは呆然としていました。

するとそのベロリン体が、金網のこちらへ向きを変えました。

今にも何かを撒き散らさんばかり!

「な、なんか出てくる!」

「キャーーーー!!!」

叫びながら、3人は金網から遠のきました。

ポツンとひとりで勝手に興奮した馬が一頭。

その表情は、ほかの馬たちと全く変わらない、平然としたもの。

「なにか?」

そんなことを言いそうな顔です。

屈託がなさすぎです。

そんなことを思って、思わず笑いそうになったとき、

変化が起こりました。

二回も人間の女に逃げられたせいでしょうか?

見る見るうちに、ベロリン体が小さくなっていきました。

それはまるで、デジカメの電源を切ったら

飛び出ていたレンズが仕舞われていくように・・・。

10分の1にも縮んだでしょうか。

あまりにすばらしい生物のメカニズムに、見とれていると、

近くにいた男がつぶやきました。

「馬並み・・・ってこんなにすごいことだったんだ。」

しみじみとした声でした。

無邪気で尊い自然の生き物に乾杯!

この日の記念に、乗馬体験した私でした。

(写真=私を載せてくれた馬と。 プライバシー保護のため一部修正しています。)

アトリエ小びん

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