ノーカントリー
疲れた……始まってすぐに惨殺死体現場を見ることになり、その後ずーっと殺人鬼と主人公との緊迫した殺人チェイスが繰り広げられるのだから、ま〜疲れる。色んな意味でこの暗さ、コーエン兄弟作品の中では「ファーゴ」の上を行く暗さと重さなんじゃないかな。ほとんどBGM無しのところが、緊迫感と重さをより一層盛り立てる。
簡単に言えば、物語は麻薬の売上を奪い合う人間達と、それを追いかける警察官が感じる社会の無常観を表した話である。この物語を追いかけながら、理解に苦しみ、むなしさを代弁する警察官のトミー・リー・ジョーンズは大きなキーとなっている。
そもそも売上金をひょんなことから横取りした男と、売上金を貰うはずだった男とが追いかけっこする話なのだが、話の結末はその2者が交わらずにあっけない終わりを迎える。
すべてがむなしく、すべてが繋がらず、ただ続くのはむなしさだけ、みたいな物語。その、社会の変化を目の当たりにしつつも、理解できず、恐怖を覚える警察官。この警察官の思いは少し大人になった人間であれば少なからず共感できるはず。その共感が大きければ大きい程、この物語は恐ろしく感じられる。殺人鬼はただの象徴に過ぎない。残像を残して消える殺人鬼が、これからどんな風になるのか、私は恐ろしくて仕方がない。これを見た夜、私は殺人鬼に襲われる夢を見たくらいだ。
それにしても、殺人鬼を演じたスペインの俳優、ハビエル・バルデムは圧巻。この不気味さ、恐ろしさは、何を考えているかわからない俳優私のNO.5に入る演技かな。本人は気に入っていなかったようだけど、この妙なヘアスタイルがそれを助長している。それが証拠に、インタビュー時の普通の髪型の写真はまるで別人だ。ジョージ・クルーニーみたいにやさしそうでカッコいい。俳優ってスゴいなと改めて思う。
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